小学生の語りということもあって、タッチは寓話的なのだが、グロテスクなシーンもものすごくグロテスクかつ即物的に描かれ、物理的な(あるいは実際的な)側面をなおざりにしていない。この小説に現れたある種の生々しさは、小説すばる2018年11月号に掲載された初の読み切り短篇「拭っても、拭っても」にも共通している。

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「拭っても、拭っても」は、潔癖症の相手との恋愛にさんざんふりまわされ、理不尽な目に遭い続けたアラサー女性のゆりが語り手。短編小説のお手本のような、優等生的な(つまり、〈小説すばる〉のような中間小説誌にいかにも載っていそうな、じつにプロフェッショナルな)作品だった。

 その小説の冒頭、ゆりは、可愛い格好をしてデートに赴く二十代前半のふわふわ女子を街角で見かけて、ヒールの足の「うっすらと筋が浮き上がったアキレス腱にべたりと貼られた茶色の絆創膏」に目を止め、彼女が待ち合わせ相手と合流してデートに去ってゆくのを見送りながら、「なんだこの流れ弾にあたったような気分は」と述懐する。

 セックスのとき、その絆創膏がマイナスの効果をもたらさないか? というのが彼女の最大の疑問。靴擦れの傷口を隠すことは正義なのか?

 あるある式に女性読者の共感が得られそうなエピソードをちりばめたこの前作と比較すると、身体感覚を描く点は同様でも、「ジャム」の非日常性は前作の日常性の対極にある。というか、松井玲奈はこの短篇で、プロ作家としての幅広さを実証してみせたと言っていいだろう。この才能は本物だ。

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