NaNoMoRaL
NaNoMoRaL

 11月11日、NaNoMoRaLが渋谷WWWでワンマンライブ『oneone oneone』を開催した。ボーカルの雨宮未來とボーカル・マニュピレーターの梶原パセリちゃんによる2人組ユニット・NaNoMoRaLは主にアイドルシーンで活動しているが、作詞作曲からトラック制作まで2人で行っている意味ではアーティストと呼ぶ方が近いのかもしれない。

【写真】NaNoMoRaL渋谷ワンマン成功!2人で築くオルタナティブアイドルの道【写真23枚】

 しかし、何の職業についていてもその土地のアイドルと呼ばれていたであろう雨宮の「絶対的アイドル感」。そして男性でありながら、ライブでは時に雨宮への声援を上回るほどコールを浴びるパセリちゃんのステージングは、今の日本の女性アイドルシーンの文化ならでは成立しえるもの。そして深夜の煩悶から夜明けの光明を描くような、聴いていて幸せに導く曲の数々は、この2人しか描けない。

 この秋には京都の歴史あるロックフェス・ボロフェスタに出演するなど、アイドルシーン以外にもその魅力は届きだしてきている2人。さらにセカンドミニアルバム『a zen bou zen』発売と、そんな中のワンマンはあたたかくもいい風が吹いている今のNaNoMoRaLらしいライブとなった。

 このワンマンのための特別なオーバーチュア『micromoral』が流れる中、溜めに溜めてステージに登場した2人は新衣装。ジャージベースのいかにも動きやすい雨宮に、いつもどおりスカート姿のパセリちゃん。いつもの対バンライブと違って、2人のためだけに最高に仕上げたサウンドをバックに笑顔で登場する姿からは、普段どおりでありながら「最高のNaNoMoRaL」を更新する予感を感じさせる。

 1曲目は『モノクロマジック』、のっけから盛り上がる観客とのコール&レスポンスにさらに笑顔を弾ませながら歌う雨宮。そのサビの「君の人生にはなまるをつけてあげる」というフレーズを聴く者を信じさせるだけの肯定力が雨宮の魅力だ。最前から最後方まで、どこにいようと近い距離に感じさせてしまうチャーミングな笑顔と存在感で、早々と会場はステージとフロア一体な空気に包まれた

 2曲目はニューアルバムから『ルミネイション』、バンドサウンド色が強くなった新作ならではの疾走感で会場全体に拳をあげさせた。この日最初のMCでは、朝のツイートの誤字の話や、新衣装が共演も多いアイドルグループnuanceのプロデューサーに似てるといった話など、ワンマン感なさすぎる普段着トーク。そんな中で「ワンマンライブ恒例ですけど、全編ですべてを愉しんでいただくスタイルなので、アンコールございません!」と予告。

 この日は照明こそいつも以上に凝っていたが、ステージ上に派手な舞台装置やバックバンドもなく、いつもどおり2人だけ。ステージ上もバックステージもすべて2人でやってきたNaNoMoRaLだからこその、演出で見せることより大事なライブに対する自信、それと「いつもどおりでありながら、最高のいつもどおりを楽しんでほしい」という気持がアンコールなし宣言に感じられた。

 あたたかなメロディの『春になる』、エモーショナルな2人の歌唱に惹きつけられる『げろれろる』からパンキッシュな『シンダフリズム』で会場の熱を上げていく。さらにニューアルバム曲『エンドレスでした』『もんすた』を披露し、あらためてNaNoMoRaLのこれまで以上に広がった世界を体感させられる。

 ふたたびのMCコーナーではここから後半戦であることを伝えた以外は「ワンマンでする面白い話……ないな!」とあいかわらずふわふわしたトーク。「楽しいが勝っちゃって何も浮かばない!」「言うことぜんぶ忘れちゃったよ!」と笑顔で何も出ない報告。ワンマンなりの思いはありながらも、「楽しい!」が強すぎてしまうところがいかにもこの2人らしい。

 パセリちゃんがギターを持ってのアコースティックナンバー『とうみん』、そして『にこにこざわーるど』から、デビュー時から歌い続けてきたナンバー『人間やるのやめた』。その天真爛漫な笑顔が一変し、心を掴んで引き裂くような歌をぶちまける雨宮。「エモさ」を売りにするロック系のアイドルは数いれど、この情感に溢れ、そこか爆ぜたような昂りを見せる歌声はNaNoMoRaLならでは。

 続くMCで雨宮は涙声をこぼしながらも、「今日は本当は泣く予定じゃなかったので……わたし人前では泣かないんですよ。歌の最中は泣いても良いと思ってるんですけど、MCだと泣いちゃだめですね、他に喋れる人がいないから(笑)。……感動、しましたね」とあらためてこの場所に集ったファンに今の思いを率直に語る。

「次いきますね。わたし泣いたら止まらないタイプなんですよ」とヒットしたイントロは『ハジマル』。この日は平日夜とあって開演に間に合わなかった仕事帰りのファンも多かったが、この頃には通路までいっぱい。そんな満杯のフロアから彼女に力を送るように、落ちサビで一斉に手が伸ばされる。

 そしてNaNoMoRaLの最新チューン『唖然呆然』。「リズムにのって体揺らしちゃってください!」と雨宮が煽り、会場中ピースフルな空気に満ち溢れる中サビの「幸せで死にそうだ!」のフレーズにこの日いちばんの歓声が起きる。

 続いて普段のライブでは最後に持ってくることも多い『サーチライト』でフロアはもちろん雨宮自身も跳ねまくる。MCでパセリちゃんから「音楽は聴いてくれる人がいないと意味がないというのを雨宮未來と出会って僕は知ったような感じがしていて。『唖然呆然』って曲あるじゃないですか。このテンポの曲はウケないって思ってたんです。でも、これだけ湧いて楽しんでくれて、いいお客さんに恵まれてるなって思いました」と自らの音楽人生も含めて振り返りつつこの場に来た感謝を述べる。

「もう語ることはないですね。過去のことを振り返ってももったいないから、未来に向かっていくしかないよね」「2000本安打打った人が、記録達成して次の目標を聞かれた時『次のヒットがいちばん大事です』って言ったの」「じゃあ次のライブが大事ですね!」という2人のやりとりから、この日最後にかかった曲はニューアルバムから『コンテニ』。タイトルどおり、NaNoMoRaLはいままでどおりのライブをコンティニューしながらも、楽曲でその進化を見せていく。そんな思いを曲の中で語るようなこの日のラストチューンだった。

 予告どおりアンコールはなかったが、退場直前に雨宮がマイクに歯をぶつけて「あっ、歯が欠けた!」と言って、会場いっぱいのファンをどよめかせてライブを終えたところがまた妙にNaNoMoRaLらしかった。

 アイドルは演者がいてプロデューサーがいて曲を作る人がいて、というチームプレイが魅力だけれど、NaNoMoRaLは演者でもあり曲も書きトラックも制作、プロデュースもマネージメントも自分たちとほぼ2人で完結している。だからこそ、壇上のふたりと観客が作り出すライブの空気はより混じりけのないピュアなものを感じる。

 ふたりで作り上げる文字通りの「インディーズ」なアイドルであり、その在り方はアイドルの可能性を広げる「オルタナティブアイドル」と呼ぶにふさわしい。NaNoMoRaLにしか作れない世界と可能性がより広く届くきっかけとなるワンマンになったはずだ。

(文=大坪ケムタ、撮影=hitoshi.t、長谷川さや)
 

【関連記事】

・次世代アイドルの頂点モリワキユイ「山口からメンバーがファンと一緒にバスで応援に来てくれました!」【写真44枚】NIG2019優勝インタビュー1/5

・アップアップガールズ(2)デビュー2年半を経て1stアルバム発売&ワンマン大成功「皆さんの中の青春がライバルです!」【写真22枚】

・めろん畑 a go go“ロッキンなマスクアイドル”が、新たな仲間とワンマンライブを開催!【写真22枚】

・tipToe.現体制最後のバンドセットで最も激しい6人のステージ!7thワンマンライブ「MUSIC」レポート【写真12枚】

・ハコイリムスメ我妻桃実「卒業公演」完全レポート!!【写真24枚】すべての人にビッグラブを!“ぽにょ”最高の笑顔でラストライブ