2022年9月24日、SKE48須田亜香里の卒業コンサートが愛知・日本ガイシホールで開催。30歳の今まで満喫してきた須田のアイドル人生。その集大成となるステージの模様を、彼女を見守ってきた元SKE48の大場美奈がお届けする。

須田亜香里の最高に幸せな姿をこの目で現地で見守れてよかったと心から思う。
影アナで早速、感極まっちゃうところがいつものだーすーっぽいなぁ、と会場に来ていたほかの元メンバーとも笑ってしまった。いつも本番前とか撮影中とか、周りにいる人達が慌てるタイミングでポロポロと涙が溢れてきちゃう子だったことを思い出す。この日も裏でメイクさんが慌てたのだろうと思う。メンバーやスタッフさんにとって、その光景はもう面白く楽しく感じられて、メイクさんがだーすーのメイクを直してる中で後輩たちが泣き止ませようとみんなで寄り添う。すると、その優しさにだーすーはまた嬉しくて泣いちゃうみたいな、そんなシーンがよくあった。最後の卒業コンサートの今日もそんな場面があったのだろうか。
『今の私じゃダメなんだ』から、このコンサートは始まった。だーすーの象徴でもあるこの曲をオープニングに、可愛い新衣装を着てひとりで歌ってる姿を見て、いよいよ始まったんだ、と心の中で一呼吸した。だーすーが卒業を決めて準備をしてきたのだから、このライブを見守る側も卒業をちゃんと受け止めなきゃ、と思った。

　どこまでも頑張り続ける努力の人。睡眠を削るのは当然で、そして、とっても感情に正直な人。表舞台で顔をくしゃくしゃにして笑ったり泣いたりできるのって、表でも裏でも変わらずずっと正直な人だから。裏だから安心して大号泣するとかじゃなくて、ファンの人やメンバー、スタッフさんが居る場所がだーすーにとって安心する場なんだと思う。正直、私にはそんなだーすーの集大成は想像がつかなかった。
私の卒業の時に、だーすーが「私、こんな大変なの無理だぁ」と笑いながら言ってきたことを思い出した。卒業コンサートを作り上げるには、体力も気力も無限にいる。そう言っていたこともあるし、卒業でさらに多忙なだーすーがどうやってこの日を迎えたのか気になって楽しみだった。
『恋を語る詩人になれなくて』『シアターの女神』など、だーすーの代表的な思い出のある曲が歌われていく。ストレートに表現するだーすーだからこそ、１分１秒も余すことなく楽しむって迫力が全身から溢れていた。30歳なのに、というよりは、30歳までアイドルとして駆け抜けてきたからこそ、それだけ全身全霊でステージで楽しむことができる。

MCで「コンサートタイトル『君だけが瞳の中のセンター』の“君だけが“の部分はファンの皆がすぐ他の子に心移りするから、せめてもの嫉妬心を出しちゃいました」というだーすーの言葉に、特にあかりん推し席の人達がすごく嬉しそうに微笑んでる横顔を見られてほっこりした。ずっと変わらず「あかりが一番がいい！」って言えるのは、ファンとメンバーお互いの信頼があってこそ。そうしたくてもなんだか恥ずかしくて言えなかったりするけど、だーすーはしっかりファンのみんなに届くように伝えられるんだよね。相変わらず凄いよ、本当に。これも紛らわしいことはせず、ストレートで真っ直ぐな人柄だからこそだと私は思う。

『女の子の第六感』や『万華鏡』は過去、雑誌のインタビューで、だーすーが言っていた衣装へのこだわりが見られた。今までとはまた違うトレンド感のある衣装で、メンバー目線で語ると、それがとっても嬉しいことの一つでもあるのだ。だーすーは常々アイドルにとっての衣装の大切さにこだわりを強く持っていた。そして、それは何より後輩たちに、これからのために残してあげられる財産でもある。だから今回のだーすーの一つ一つの新衣装がとっても可愛くてデザイン性に富んでいたのは、きっとだーすーがこだわったのだろうな、と思った。もう、どこまで頑張ったのよ。
そして、ゲストは松村香織。SKE48として最後のだーすー&つーまーの『ここで一発』が始まった。この曲って明るくて楽しいはずなのに、最近は大事な節目に歌われるので、この2人の特別な関係性も相まって感動が深まってしまう。続けて、にーたー（谷真理佳）が登場し、これも久しぶりの3人で『恋よりもDream』。この時の空気感っていうのかな、なんだか3人を見てたら懐かしくて、時が戻ったように感じたのも、私がここで感動した理由だと思う。

須田亜香里といえば選抜総選挙。歴史VTRを見て、改めてこの人の努力は計り知れないと思った。誰もが憧れる道筋である。でも近くで活動してきたからこそ思うが、根性や信念をしっかり貫けたすごさもある。メンバーしか見られない、ファンの人しか見られない須田亜香里があって、その全部が合わさったこその結果だな、と。
総選挙楽曲が始まって気づいたことがある。ここまでかなり踊ってきてはいるが、だーすーはずっとヒールを履いていた。曲数的にまだ半分あって、会場も広くてずっと出ずっぱりなのにヒールで踊り続けるのは、日頃からスタイル良く見える方を選択するというだーすーのこだわりなのだろう。正直SKE48のダンスはヒール向きではないのだが、極力というかほぼ脚が綺麗に見える方を選ぶのがだーすーなのである。

 本編も勢いよく飛ばしていく感じがだーすーの真っ直ぐさにリンクしていて、この時は無我夢中で楽しかった。 だーすーが『キンモクセイ』で会場をオレンジ色で染めてほしいと伝え、久しぶりに会場がオレンジ一色になった。それを見て、昔、先輩たちが私たちに見せてくれた時の景色を思い出す。時が経って、須田亜香里が今の後輩たちに見せてあげる側になったんだと思った。
卒コンのアンコール待ちの時間って初めて体感したけど、ワクワクして楽しみに感じるものなのだと今回初めて知った。どんな色の、どんな形のドレスかな?　髪型はなんだろう？　と待ってる時間がとても楽しかった。そしてアップヘアでピンクベースのふんわりドレスで現れただーすーを見て涙が溢れてきた。神々しくて儚くて、楽しみにしていたドレス姿だけど、それを見たら終わりが近づいているということだから。
最後『君のことが好きだから』でメンバーのみんなからサプライズされ、号泣して幸せを噛み締めるだーすーを見て「お疲れさま！　よく頑張ったよ」と思った。このコンサートも人柄もそうだけど、気持ちがストレートに表れる子。だから時には後輩たちに教えてもなかなか上手く伝わらなくて、もどかしい時もあって悩んでいたこともあったけど、後輩たちにはしっかり伝わっていて、そしてちゃんと成長していた。そして、須田亜香里という大きな存在を支えられる程に頼もしくなっていたんだなというのがわかった。その先頭を走る須田亜香里もカッコよくて素敵だった。後輩に甘えつつ伸び伸びみんなと走っている須田亜香里も最高に可愛かった。会場一帯が須田亜香里の笑顔を守りたい人たちで溢れていて、そんな人たちに愛されて応援されている須田亜香里って、最強のアイドルだったじゃん、と思った。

２０２２年９月２４日　SKE４８須田亜香里卒業コンサート　セットリスト

１ 今の私じゃダメなんだ
overture
２ 恋を語る詩人になれなくて
３ SKE48
４ シアターの女神
５ オレトク
６ ソーユートコあるよね？
７ 1994年の雷鳴
８ 雨のピアニスト
９ キャンディー
１０ 女の子の第六感
１１ 万華鏡
１２ 天使のしっぽ
１３ ここで一発
１４ 恋よりもDream
１５ 孤独なバレリーナ
１６ 総選挙曲メドレー
16-A 抱きしめちゃいけない
16-B なんてボヘミアン
16-C 恋するフォーチュンクッキー
16-D 心のプラカード
16-E さよならサーフボード
16-F LOVE TRIP
16-G #好きなんだ
16-H センチメンタルトレイン
１７ １！２！３！４！　ヨロシク！
１８ 少女は真夏に何をする？
１９ 拗ねながら、雨…
２０ 快速と動体視力
２１ 好き　好き　好き
２２ キミが思ってるより…
２３ 無意識の色
２４ パレオはエメラルド
２５ キンモクセイ
EN1 私の歩き方
EN2 前しか向かねぇ
EN3 君のことが好きだもんで

（プロフィール）
おおば みな
1992年４月３日生まれ、神奈川県出身。
2009年、AKB48の９期生として加入。2014年、SKE48へ移籍。2022年４月にグループを卒業し、現在はタレントとして活動中。13年間のアイドル活動を自身の筆で赤裸々に書き下ろした『大場美奈フォトエッセイ 器用じゃないけど。』が絶賛発売中。