大場美奈が書くライブレポ SKE48チームKⅡオリジナル新公演『時間がない』 元リーダー大場美奈が新リーダー太田彩夏へ贈る最高のエール【画像39枚】
SKE48 チームKⅡの11年ぶりの新公演『時間がない』が2022年12月11日にスタートした。今春の卒業まで7年にわたってチームKⅡのリーダーを務めた大場美奈が、リーダーのバトンを引き継いだ太田彩夏が率いる新公演の初日をレポートする。メンバーの努力・絆を知る彼女が見たチームKⅡ新公演の熱さや太田へのメッセージ、楽屋裏でのチームの素顔までを情感たっぷりにつづった。
2022年春、SKE48を卒業して以来、半年ぶりに劇場へ行った。 チームKⅡの新公演の初日を観覧しにいくためだ。卒業生として、というより、今回はいちファンとして観に行った。
劇場公演では、過去のチームの“おさがり”として先輩たちがやってきた公演を行うことが多い。チームKⅡもオリジナル新公演は『ラムネの飲み方』以来、約11年ぶりだ。私がオリジナル公演を見るのは2010年のAKB48『目撃者』公演ぶり。観客として SKE48のオリジナル公演を見るのは初めてだ。ファンの皆さんも私のようにオリジナル公演を久しぶりに見る人もいれば、初めて見る人もいるのではないだろうか。
楽曲、振り付け、衣装……想像は無限大。自分の好みなのか、好みではないのか。何もかも初めて目にするので、それさえも楽しみなのはオリジナル公演の醍醐味だ。だから何も考えずにこの日をただ楽しみに待ち侘びていた。
開演前に会場入りしたファンの皆さんを一番後ろの席から見ていた。会場いっぱいのファンの皆さんが思い思いに推しメンのグッズの準備をして楽しみにしている姿がそこにはあった。決して広いとは言えない劇場の席で、それぞれペンライトの電池を確認したり、手作りのうちわを綺麗に整えたり、どんな関係者が来ているのかチェックしたり、本当にいろんな人たちがいた。この人たちがチームKⅡを、アイドルを応援してくれているのだと思ったら、感動して自然と涙が溢れた。
アイドルも尊いが、ファンも尊い。
私は(斉藤)真木子と卒業生のかおたん(松村香織)、みこってぃ(内山命)と観に来た。 チームKⅡに新公演の順番が来たときには、絶対に観に行こうと決めていた。家族のように濃い時間を過ごした妹のようなチームKⅡのメンバーたち。そんなみんなが頑張った証を現場で必ず見たかった。今回このようなコラムを書かせて頂く機会を頂けたが、それとは関係なく絶対に見たいと思っていたものだった。
開演前にスタッフルームで待機していた私たちに(荒井)優希が会いに来た。 「新公演すごいですよ!」とキラキラしながら言ってきた。こうして堂々と言えるということは、きちんと自信がある証拠だ。今更、私たちは建前を言い合う間柄ではない。微妙なことは素直に微妙だと言える関係性だからこそ、「すごいですよ」と言える自信に期待した。 その後も本番直前にも関わらず、(太田)彩夏、おしちゃん(青木詩織)、(水野)愛理も顔を見せに来てくれた。こうして卒業生が来ると、必ず駆け寄ってくるところはいつまでも変わらず可愛い。
事前情報として、『時間がない』のMVと公式チャンネルのドキュメンタリーを見ていた。 ドキュメンタリーでは、チームKⅡの先輩後輩間に壁があることが課題だと語っていた。長い間、私を含め10年選手の先輩たちが多かったチーム。 先輩のパワーがあまりにも圧倒的だったため、後輩はそれについていって順応していく、という形が今までの在り方だった。だが、今のKⅡはその形では進めない。後輩たちも今までと違い、自分の意見をしっかりと持っている。それらを先輩と後輩に挟まれた7期生のリーダー太田彩夏がどうまとめていったのか。先輩後輩間の壁をどうなくしたのか、その先のKⅡはどうなっているのか――。私はそれがとても気になった。
影アナはリーダーの彩夏。
今日は特に彩夏の姿に注目して見てみたいと思っていた。リーダーとして彼女の姿を見るのが初めてだったからである。どんな表情で、どんな姿で、どんな言葉を伝えるのか。昔から“緊張しい”ではあるから、内心ドキドキしまくりだろう。しかし、そういう姿を見破られたくない性格でもある。きっと必死に隠しているのだろう。周りから見ると隠せてないのだが、本人はポーカーフェイスのつもり。それも彼女の可愛さだ。
影アナ後、劇場内に時計の針の音が鳴り響いた。
早速今までの公演にはない新しい演出だ。こういう仕掛けのおかげで、本公演にはどんな演出が待っているのか楽しみが膨らむ。
ついに幕が開いた。
オープニングブロックだけでも驚きの演出が続出し、最初は呆気にとられた。
正直言うと、私も48グループを好きな者としては古参なほうだ。だからこそ、プロデューサーが変わっての新しい公演というのは、めちゃくちゃ期待できなかった。楽曲のテイストが変わって、受け入れられるわけないと勝手に思い込んでいたが、私は1曲目からすでに虜になっていた。
何よりメンバー個人のレベルがアップしていることに気が付いた。 江籠(裕奈)ちゃん、(日高)優月、優希は元々、安定した高いパフォーマンスレベルを持つ3人だったが、彼女たちはより進化していた。いつしかこのチームの先頭を走っている。そんな3人の姿を見ただけで感動した。
ダンスが苦手な印象のおしちゃんやちま(川嶋美晴)、ふゆっぴ(藤本冬香)も確実に変わっていた。 みんな頑張り屋さんで、いっぱい努力する子たちだ。今日のこの日のためにどれだけの努力をしたのだろう。そう考えさせるほどに見違えていた。“ダンス苦手組”――そんなイメージはもはやなかった。
(北野)瑠華は私たち卒業生の間で「昔の瑠華が帰ってきた」と言われるくらい変わっていた。
元々ポテンシャルはすごく高い。なのに、ここ数年はなぜかそれを活かしきれていなかった。何度も「もっとできるんだからやりな」と声をかけていたが、なかなか実を結ばなかったのだ。
だが、この日の瑠華は違った。
がむしゃらに動き、髪が乱れる姿や、汗をかく姿がそこにはあった。やっと瑠華の本気が見られた。今までの気持ちが成仏した気分だ。
オープニング3曲目あたりで涙が溢れて止まらなかった。ライトで照らされたみんなの顔が見えた瞬間、そのあまりの輝きに感動したのだ。
彩夏のダンスのキレの良さが際立っていて驚いたし、 愛理の歌声が目立って聞こえてくるのは、スタッフから評価されてるんだな、と感じる。スタイルとビジュアルが最高に整っていたらぶ(中野愛理)、さあや(入内嶋涼)、えな(鈴木愛菜)、いとみき(伊藤実希)には終始目を惹かれていたし、 あーや(岡本彩夏)は休養を経たからこそ感じられるステージの楽しさや喜びに満ち溢れているように見えた。
10期の青木(莉華)ちゃん、西井(美桜)ちゃんは、一番下の後輩とは思えないくらいのパフォーマンスで光っていた。
先輩に遠慮することなく、同じ土俵で戦えている姿がかっこよすぎた。チームKⅡに、もはや先輩後輩の壁はなかった。
途中で「これってアイドルの、SKE48の公演だよね?」とふと思った。“公演”というより、“show”を見ているような気分になったからだった。巧みな振り付けに、演出や衣装、照明のおかげで、立ち見にもかかわらず満足度が高すぎた。
これは個人的なことだが、本編ラストの衣装が私の卒業コンサートで作成された衣装だった。自分が在籍したチームKⅡに受け継がれていることが何より嬉しかった。
そうそう、アンコール2曲目『消えない虹を心にかけて』のイントロに“SKE48“っぽさを感じた部分について、きっとヲタクの皆さんには共感してもらえると勝手に思っている。ちなみに私の一番のお気に入りはこの曲。めっちゃくちゃ好み。
この公演を見てきて、一番印象的だったのが愛理だ。 KⅡに入ってきた頃はわがままで、破天荒で、怒られてばっかりな“子供”だった。でもこの日は自分の歌や魅せ方を思う存分楽しんで表現していた。 緊張でテンパる彩夏をフォローしてあげたり、見守ってあげていた。 そんなことができるようになったんだね。「辞めたい」が口癖な子だったけど、辞めなくてよかったね。いつの間にかしっかり成長している姿に、私は涙が止まらなくなった。
公演ラストの曲のイントロでは、リーダー・彩夏と、副リーダー・おしちゃんの2人が最前のダブルセンターだった。この2人がメンバーに見守られながら歌う曲終盤の姿にはすでに大号泣だった。あの姿を見て泣かなかった人は、多分劇場内にいなかったはず。
決してリーダータイプではない2人だからこそ、苦労したことだろう。でも、誰よりもこのチームのことを考えて、みんなのことを信じて、ここまでやってきたのだと思う。この日は、しっかりみんなの気持ちがひとつになっていた。
初日にしか見られない、初日だからこそのみんなの顔が見られて、私は幸せだった。
私の感想は「最高の公演だった」だ。
終演後に、瑠華、優希、おしちゃんが駆け寄ってきた。とにかく褒めまくった。
愛理や優月、(鈴木)愛菜にあーやも集まってきた。それぞれ褒めたいポイントを伝えるとみんな「そうでしょ?」という返答。見せる側がそれだけ自信のあるものだったというのがこの公演の最高な理由のひとつだ。
江籠ちゃんは私たちが声をかけたら泣いてしまった。「ここまで頑張ってよかったね」と伝えた。ずっと諦められない場所があったはず。どんなときもしっかり真摯に直向きに、例えひとりになっても頑張ってきたからこその今がある。だから私は「報われたね」って伝えたかったのだ。
彩夏が今にも泣きそうな顔でやってきた。「お疲れ様です」と言って、少し顔を伏せたので、すかさず褒めた。それでも俯いたまま「反省がいっぱい」と言っていた。彩夏なりに完璧を追い求めているのだろう。
「まだリーダーになって半年でしょ? 最初から完璧な人いないよ。完璧だったら逆に困っちゃうわ」と笑いを交えながら伝えた。そして、「ここまで素敵な公演を作ったことはすごいことだよ」と。
【リーダー】――。
リーダーというのは誰にでもできることだと私は思っている。ただし、自分ではなく人のために何ができるか、なのだと思う。彩夏は、ちゃんと人を愛し、愛される人。 それを忘れなければ、きっと最高のリーダーになれるはず。私とどことなく似ている気がするから、きっといつか彩夏も胸を張ってリーダーをやれると思う。
私だってリーダーを2回経験したが、元々その素質はない。失敗をして、悔やんで、学んで、支えられて、成長できた。 指名されたからやっていたが、選ばれた責任を受け取って自分なりに向き合った。 私はリーダーをしたことで、自分の人生にとってプラスになれる何かを学べたと思う。そんなリーダーの経験を経て私なりに学べたことや実践してきたことを次回は書いていきたいと思う。
(プロフィール)
おおば みな
1992年4月3日生まれ、神奈川県出身。
2009年、AKB48の9期生として加入。2014年、SKE48へ移籍。2022年4月にグループを卒業し、現在はタレントとして活動中。13年間のアイドル活動を自身の筆で赤裸々に書き下ろした『大場美奈フォトエッセイ 器用じゃないけど。』が絶賛発売中。